【映画】CUT


名匠アミール・ナデリ監督、西島秀俊主演。常磐貴子、でんでんなど個性派、実力派俳優が数名。
話題のこの映画、ついに観に行ってきました。観に行ったときに監督も来日していて、気さくに振る舞っていました。

ただ。。。。
年末年始の旅行とどんちゃん騒ぎで、時差ぼけ、かつアルコールが入って鑑賞してしまったからか、
人生初、映画館で寝てしまうという自体に。。ああ、さいあくではないか。残念ながら今回は、覚えている範囲での感想になってしまう。

映画から芸術性が失われつつあることに危機を感じ、創作し続ける映画監督のお話。兄から投資してもらい映画制作を続けていたが、実は兄はヤクザ業で借金をして費用を捻出していたと、兄の死後に知らされる。そしてその借金の肩代わりしなければならに状況に陥る。借金返済に、ひょんなことから「自身を殴る」という、文字通り身を削る方法が可能な唯一の手段であると悟った主人公は、映画への愛を再確認する手段としてその苦境を利用し、自身の体を賭ける。自己陶酔型のマゾ体質を開花させ、外的な痛みがこれまでの芸術的映画の不遇と自身で再解釈し、映画創作への熱意を更に燃えたぎらせるというのが話の骨子。

この映画の特徴はまず第一に、シーンの取り方という視点で観た場合、小津的な間の取り方があったように思う。
あの独特の間延びの演出には、いくらかのメッセージを否が応でも探してしまう。
だが、それは時に睡魔へと変貌する事もある。
酔っているから寝てしまった言い訳だけれども、映画のテンポに強いギミックを感じてしまい、中に入り込めなかった。行間の演出は、感性が合わないと伝わってこない。だって、映画を愛する主人公の強い想いは、独りよがりに思えてしまうもの。一方的な演出は映画を創る側の傲慢ささえ感じさせてしまう。

第二に、構成。
とても面白い脚本構成で、今までの映画で観た事がない。
端的に行ってしまえば、映画批評をストーリーとして長い時間をかけて紹介するもの。だけどあのランキング的な作品紹介て、誰目線?
映画の芸術性がなくなってしまった、とする主人公の主張と、殴られて殴られて噴出する映画創作欲求。爆発するかのごとく。ただ構成がシンプルでメッセージ性がストレート、過剰演出な分、で?っていう思いを一度抱いてしうとそこから逃れられない。

第三に、映画のメッセージでもある「芸術性」
この映画自体は、作り手へ向けた映画であり、映画際のオープニングにはふさわしいが、映画を娯楽として鑑賞しに行く一般人には高尚すぎる高い障壁がある。強いて言えば、殴られ境地に達する俳優の渾身の演技が唯一の娯楽性か。また映画好きに限ってはおいしい娯楽であり、過去作品の引用、監督への敬愛表現シーンなど垂涎すること間違いない。
これが芸術性の高い映画かと言えば、「No」と言わざるを得ないが、「芸術性とは何か」「映画のあり方とは何ぞや」の議論を生む刺激剤としてはとても意義のある作品。

映画の各シーンはとても印象深く脳裏に焼き付いて離れない。
体調が万全な時にリベンジしたいものだ。